株式会社ジェイックでは、ジェイックのご紹介で就職先が決定した学生に対して、「内定者研修」を実施しています。21卒内定者に関しては、9月より開始し、現在までに100名以上が内定者研修を受講しています。
今回は、ジェイックが行っている内定者研修の目的や内容、指導のポイントなどについて内定者研修の講師に話を聞きました。
<講師プロフィール>
馬場美保子:大手銀行、投資顧問会社など金融業界を経て、2013年にCDAを取得し人材業界へキャリアチェンジ。国の女性再就職支援事業や自治体の若者就職支援事業などの公共事業に4年間携わった後、2017年株式会社ジェイックに入社。2級キャリアコンサルティング技能士。
村松三智子:教育系の大学を卒業後、障がい者福祉の仕事を経て同社に入社。若年層向け就職支援サービスの就職アドバイザーを務める。また大学内での就職イベントの実施や新規事業の立ち上げなども経験。現在は新卒学生に特化し就職サポートを実施。
――まず、内定者研修実施の目的を教えてください。
(馬場)内定者研修は、「社会人になるという意識の醸成」「社会人として必要な基礎スキルの習得」「入社までの不安解消」を目的としています。
就職支援会社として、内定辞退を減らしたいという思いはもちろんありますが、ジェイックの就職支援のスタンスとして、就職先決定がゴールではなく、社会人になって活躍することを目指しています。これは、新卒支援だけでなく、中退者支援、第二新卒支援、30代の支援といったジェイックで行っているすべての就職支援に共通した考え方です。
ジェイックの採用支援ページ
特に新卒学生に関しては、これまでの学生生活とは異なる社会人生活という新しい環境に踏み出します。人によっては、社会人になるという意識の薄いまま、4月から入社し、入社後ギャップや居づらさを感じて、早期退職をしてしまうという事例も少なくありません。
厚生労働省資料より作成厚生労働省(2020)『新規学卒者の離職状況』によると、大卒3年以内中退率は約3割
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
また、中には卒業ができなくなって、就職がかなわなくなってしまう学生も毎年います。
文部科学省(2014)『学生の中途退学や休学等の状況について』によると、大学中退者は年間約8万人
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/26/10/__icsFiles/afieldfile/2014/10/08/1352425_01.pdfFNNプライムオンライン(2020年12月1日)『卒論を残すのみだった大学生が中退…相談窓口「コロナ中退119番」に聞いた実情』
https://www.fnn.jp/articles/-/112610
そういった学生を1人でも減らせるように、なるべく早く、自分の現状を理解し、入社に向けての(学業含めた)準備をしてもらうきっかけを作るのが内定者研修です。
――次に、内定者研修の内容について教えてください。
(村松)内定者研修では、社会人になるという意識醸成といった「マインド面」の研修と基本中の基本のビジネスマナーなど「スキル面」の研修を実施します。
マインド面の研修では、学生と社会人の違いについて考えます。社会人になったら、これまで以上に社会的な責任が求められたり、会社に入ったら、会社の規則に従って勤務し、会社やお客様に対して価値提供をする必要があったりします。そのための健康管理ももちろん自己責任です。学生時代は自由に時間が使えていたり、当然のように周囲が教えてくれていたりしたかもしれませんが、そうではなくなります。そういった違いをきちんと伝え、残りの学生生活でマインドの面をしっかりと準備してもらえるようにします。
スキル面の研修では、基本的なビジネス文書を簡単に学びます。LINEなどのSNSでのコミュニケーションが増え、就活でもメールで文章を書く機会が減ってきています。しかし、社会人になったら、メールでのやりとりは必須ですし、お客様に対して、正しいメールが書けないのは社会人として恥ずかしいことです。短い研修の中では、少ししか伝えることはできませんが、それでも学生からは、「入社後のマナーを学べてよかった。」「ビジネス文書の書き方があいまいだったので、勉強になった」といった声が上がっています。
対象 :当社「新卒カレッジ®」に登録した2021年卒業予定者
回答者数:297名(内、就職活動継続中161名)
期間 :2020年12月1日-12月3日
ジェイック「2020年12月実施 求人検索方法に関する21卒学生アンケート」
https://www.jaic-g.com/news/pressrelease/news-1093/
――内定者研修で特に気を付けて伝えていることはありますか?
(馬場)特に大事にしているのは「主体性」に関してですね。これまでの学生生活では、困っていれば、誰かが教えてくれる場面も多かったと思います。しかし、社会人になったら、上司が細かく手取り足取り教えてくれるわけではありません。自分で学び取りに行くことが重要です。入社後研修のある会社は多いですが、さらにスキルアップをするには、自分から学びの機会を作ることも重要です。
さらに、今年からはリモートワークになった会社も多くあり、ちょっとした相談や会話などの気軽なコミュニケーションの取りづらさが弊害として挙がっています。これまで以上に、主体的なコミュニケーションが必要になってくるでしょう。主体性と言っても、すべてを自分で行うというわけではなく、周囲に助けを求める、相談をするといったことも含めて、自らの仕事をやりやすくするために主体性は重要であると強く伝えています。
(村松)今持っている内定は特別なもので、大切にしないといけないということを丁寧に伝えています。私は就活中の学生と話をすることも多いのですが、まだ内定が1社もない学生とも話をします。ずっと志望していた業界が新型コロナの影響で採用を取りやめてしまい、悲しさと不安で泣きながら相談をしてくる学生もいます。だから、今持っている内定は、とても貴重で大切なもの。採用してくれた会社でしっかりと活躍できるように準備しましょうねと伝えています。
2020年11月17日
日本経済新聞『大卒内定率5年ぶり70%割れ 10月時点69.8%』
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66310020X11C20A1MM8000
――今年の内定者の傾向や特徴は何かありますか?
(馬場)今年の内定者は、研修受講に対して前向きな方が多い印象です。昨年の内定者研修でも講師をしていましたが、ただ来ているだけで、受講態度の良くない学生も少数いました。今年から、内定者研修は完全オンラインで実施していますが、素直に主体的に参加をしている印象です。
今年の就活は、思うように情報収集ができなかったり、同じ環境の就活生と話したりする機会が極端に少なかったりするので、ひとつでも多くの情報を得たいという欲求が強く、前向きな受講態度につながっているのかもしれません。
(村松)一方で、就職先が決定していることに対して安心しきっている内定者もいます。
研修のはじめに、グループでの自己紹介をするのですが、就活中の研修や面接ではすらすらと話せていた自己紹介が、内定者研修ではしどろもどろになるなど、「おや?」と思う場面もあります。また、就活中はあった主体性がなくなってしまっている方もいますね。内定者研修が兜の緒を締める機会になっていると思います。
――内定者研修で学生からの反響の大きいコンテンツはありますか?
(馬場)ケーススタディーや実践練習はかなり反響が大きいです。
研修の中では、入社した後に起こりそうな「こんなときどうする?」というケーススタディーを営業職の場合と事務職の場合の2つのパターンに分けて行います。このコンテンツに関しては、研修後のアンケートでもよく話題に上がっています。
主体性や報連相の重要性は、座学でも伝えますが、ケーススタディーを通して、より実際の会社をイメージすることができているのだと思います。
(村松)ビジネス文書の書き方も反響が大きいです。研修の中では、メールの送り方を実践しながら学びます。社会人であれば知っていて当たり前のことでも、知らないところで失礼な印象を与えていることもあります。研修後は、内定者研修を受けての感想をメールで提出してもらう宿題を出し、実際に正しい形式でメールを書く練習をしていただいています。
短い研修の中では、細かく教えることはできませんが、ビジネスマナーを知るきっかけを提供して、彼らが入社までに自ら学んでくれると信じています。
――学生から入社までの不安の声を聴くことがあると思いますが、昨年と比べて変化はありますか?
(馬場)不安の内容は昨年までと比べて大きな変化は感じません。しかし、例年と比べて、内定者同士の横のつながりが薄く、内定を取っている実感が少ない学生も中にはいるようです。新型コロナの影響で、内定式を中止・延期していたり、内定式後に内定を出している企業もあります。例年であれば、内定式で同期や人事以外の社員と会ったり、会社の雰囲気を感じたりしてましたが、今年は内定者フォローとして人事による内定後面談を実施している企業も多いようです。人事と内定者の一対一のやり取りになるので、内定者は横のつながりを感じづらく、人事は内定者の数だけフォローの時間が必要になり、例年以上に内定者フォローに苦戦をしているようです。
ジェイックで行う内定者研修では、同じ会社に入社する人が同じ研修に参加していれば、積極的に顔合わせをするようにしています。初めて会う同期とぎこちなく会話する姿は、毎年恒例の光景です。
ジェイック「【調査】コロナ禍の21卒学生の声」
https://change.jaic-college.jp/pr/korona-21sotsu-gakusei/
――企業の採用基準は変化したのでしょうか?
(村松)企業が学生に求めるものも大きくは変化していないと感じています。しかし、選考の難易度は上がっているかもしれません。ある会社では、これまで、1か月の説明会参加者数が40名だったところ、今年の説明会は1回で40名が参加しています。確実に買い手市場は進んでいて、これまで別の会社の選考を受けていて会えなかった優秀な学生と会う機会が増えています。一方で、企業が懸念しているのは、内定辞退です。採用基準が自然と上がり、優秀な学生を採用できたとしても、優秀な学生は複数内定を取得しています。内定辞退によって、採用活動を再開せざるを得ない企業も中にはあります。
――まとめ 【内定者研修受講後アンケート】内定者研修を受講して、準備不足を感じた学生は多い
内定者研修を受講した学生のアンケート結果です(110名、2020年11月12日現在)。内定者研修で社会人になる準備がまだ半分以下しか終えられてないと感じた人は4割弱でした。自由記述では、改めてどんな部分が足りていないのかを再認識する機会になったことがわかります。
Z世代と呼ばれる彼らデジタルネイティブ世代は、SNSやネットを使ってたくさんの情報に触れていますが、その中で、正しい情報を取捨選択していく主体性も必要になるでしょう。「どれか正しい情報かわからない。」「そもそも何から始めていいかわからない。」という学生もきっと多いはずです。新入社員になって、明るい社会人のスタートダッシュを切るためには、入社前後の支援を通して、正しく学ぶ機会を提供していくことが非常に重要です。
ジェイックのビジョンは、『「学ぶ楽しさ」「働く幸せ」「成長する喜び」に満ちあふれた社会を実現する。』です。内定者研修では、社会人になる準備段階として、短い時間ですが、学びと成長を得ることができている学生が少なからずいます。
コロナ禍でネガティブな気持ちや将来への不安感が大きいことと思います。しかし、新社会人になる学生にも、内定者研修や自主学習によって、不安感を和らげ、可能性を感じる場を提供することはできるかもしれません。成長や学ぶ楽しさを実感してもらい、自分自身の未来が明るく、可能性に満ちあふれていることを確信してほしいです。
アンケート結果
【内定者研修受講後アンケート】110名、2020年11月12日現在
・課題であるビジネスメールを書くということは、初めて取り組むことなのでまだいまいち何が正解なのか曖昧です。今回の課題を通して社会人になるために成長できればいいなと思います。
・入社準備やマナーなどをしっかり勉強しておくべきと再認識できた。
・文書の書き方を知らなかった
・企業様への連絡手段の確認、ビジネスメールの書き方等学ばなければいけないことがたくさんあると感じたため。
・後の行動は自分次第なので、主体的に行動しようと思いました。
・自分からアクションをおこす、という認識がなかったためまだまだ学生気分であるとおもったため
・今日の研修を通して、事例を基に考察する際に改めて納得する場面があり、社会人になる上でまだまだ不安な点があったので、入社前にしっかりと準備していきたいと思いました。
・卒業論文や免許取得がまだだから
・資格取得準備の計画が立てられていない
・まだ実感がわかない部分があったから。
・入社時まで準備しないといけないと感じる事があった為